クリネタ・バックナンバー




No.32 2015年 冬号

特集 「手紙」という手段。

太宰治が愛人に宛てた恋文に、次のような文章がある。

『僕はタバコを一万円ちかく買つて、一文無しになりました。
一ばんおいしいタバコを十個だけ、けふ、押入れの棚にかくしました。
一ばんいいひととして、ひっそり命がけで生きてゐて下さい。
コヒシイ』

最後を「恋しい」と書かず、カタカナ四文字で締めるところが、なんとも太宰らしい。

一文字一文字、手でシタタめているからこそ、その言葉に込められた思いが、ジ~ンと伝わってくる。
これが電子メールだとそうはいかない。
「コヒシイ? 何言ってんのよ、誤字打ってんじゃないわよ」……だ。

石坂洋次郎の青春小説「青い山脈」は、誤字で一躍有名になった。
「恋しい恋しい私の恋人」と書かれるべきラブレターが、「変しい変しい私の変人」となっている。
これも、手で書かれたからこその過ちだ。一生懸命書いただけに「残念~ン!」と、つい笑ってしまう。

この地球上を飛び交う電子メール数は、600億通を超えるという。
だからこそ、クリネタはあえて「手紙」というアナログコミュニケーションにこだわりたい。
その手紙を書いた人、その手紙を受け取った人、「手で書かれた紙」の内容もさることながら、
そのなかに秘められた様々な人間ドラマは、デジタルでは語れないだろう。

メールは「送る」と書くが、手紙は「贈る」と書きたい。

亀倉雄策×山城隆一 往復書簡 日暮真三
島本脩二/黒田征太郎/須田剋太/葛西 薫/平田静子/鈴木清巳/長友啓典

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