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2012.08.10

ポタポタ。 

吉永 淳 (クリネタ編集団 / フリーランスコピーライター)

珈琲が、好きだ。お酒と珈琲と煙草の中で、何かをやめて2つ選べと言われれば、間違いなく珈琲と煙草を選ぶ。親父が京都の高島屋の地下でパーコレータを買ってきたのが1960年頃だから、珈琲のキャリアはすでに50年くらいか。アルコールを抜く日があっても、珈琲を抜く日はない。ドトールでもいいし、ネスカフェのゴールドブレンドでもいい。毎日6、7杯は飲んでいる。僕にとって「ひと休み」とは、ビールを飲むことではなく、喫茶店に行って珈琲を飲むことなのだ。予備校に通っていた頃も、大学生の頃も、何かにつけて喫茶店に入り意味もなく珈琲を飲んでいた。これまで一度も禁止されたことはないから、正真正銘の珈琲中毒である。

今、いちばん落ち着く場所といえば、渋谷の「羽當」という珈琲店に行く時間だ。茶道のような時間でもあり、銀座のバーのカウンターで香しいシングルモルトウイスキーをいただく時間と同じようなゆっくりとした時間が過ぎていく。

ここの珈琲はレギュラー珈琲も美味しいが、僕が「ポタポタ」と名付けたオールドビーンズの珈琲は、あまりの美味しさに少し酔ったような心地よい気持ちになる。その香りはまさにシングルモルトウイスキーのようで、口に含んだときも、鼻に抜けるときも、飲みこんだときも、次々と香りが攻めてくれる。値段は一杯800円〜1000円。少し高いと思われるかもしれないが、カクテルよりも時間をかけて15分から20分かけてじっくりと淹れてもらうと、逆に恐縮してしまう。この値段でいいのかなあと思うほどだ。

平日の午後3時頃に行くと店は空いていて、カウンターの席に座るだけで心が平静になっていく。最初はコロンビアかマンデリン。それを飲んでいる間に、「ポタポタ」を淹れてもらう。いっしょにカボチャプリンを頼むと、さらに至福の時間が訪れる。

僕の事務所は、タフカンパニーというデザイン会社とヘアメイクの新井健生事務所と3社で一軒家を借りている。だからリビングルームは共有の打ち合わせであり、一緒に仕事仲間と、挽き立て、淹れたての珈琲を飲むことも多い。ときどき珈琲を飲めない人がいて某広告代理店の島田さんなどは冷蔵庫にミネラルウォーターと「きのこの山」を冷やしていて、一緒に珈琲時間を楽しんでいる。バリスタ担当のデザイナー宮尾さんも、かなり腕を上げてきた。彼女が「羽當」のカウンターでご主人に「私、事務所の珈琲係なんですよ」と話すと、「へえ、それは幸せですねえ」とこたえくれたと言う。景気はまだまだ良くないが、僕らの仕事は珈琲とお菓子があるかぎり幸せなのかもしれない。

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