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2013.05.20

心の旅。

吉永淳(クリネタ編集団/コピーライター)

島根県の「水の都」松江でバーを経営していた従姉妹の浩ちゃんが今年の1月16日突然亡くなって、約3ヶ月後の4月28日にその偲ぶ会に行ってきた。闘病で苦しむこともなく、閉店後の深夜、タクシーを呼んでから倒れて、あっけなく69歳でこの世を去った。

親戚の中で最もモダンな人で、僕の京都の家に遊びに来るときはファッションモデルのような華やかなワンピースを着て現れたり、和服を粋に着こなして現れたり、男三人兄弟の我が家にはとても刺激的な女性だった。東京オリンピックのころだろうか、小学校低学年の僕を初めてボーリング場に連れて行ってくれたのもポニーテール姿の浩ちゃんで、とにかくあか抜けたお姉さんだった。

6年前、50歳を過ぎてから久しぶりに浩ちゃんのバーへ立ち寄るときは「あら、いらっしゃい、大きくなったねえ」と目をまるくしながら、バカラのグラスでオールドパーのロックをつくってくれた。窓からはヴェネチアのハリーズバーのように松江城のお濠の水辺がみえた。そんな景色の中でオールドパーを口に運ぶと、その香味は年上のお姉さんそのもので、あなた、しっかり生きて、ちゃんとした大人になりなさいと言われているようだった。

偲ぶ会の次の日、午前中は中井貴一主演の映画「RAILWAY」で少し有名になった一畑電鉄で出雲大社へ行き、午後はもう灯りを灯さない店の片付けを手伝い、墓参りに行って花を飾った後、もう使わないロックグラスとマドラー、冷や酒用のガラスの器をもらってホテルに帰った。

人が亡くなることは悲しいが、心の中では亡くなった人の微笑みだけが永遠に残っていく。僕は持ち帰ったグラスにオールドパーを注ぎ、マドラーをまわすたびに、遠い夏の日のポニーテールを思い出すだろう。

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