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2013.09.09

夏の香り。

吉永淳(コピーライター)

夏が来ると、西瓜が食べたくなる。西瓜の旬は6月の中旬からで熊本の黒小玉西瓜が出始め、旬を先取りするバーではウオッカやラムなどと合わせてカクテルにする。この西瓜、テレビの情報番組でも話題になっていたので、知っている人は知っていると思うが、果肉の赤い部分がとても多く、白い部分がきわめて少ない。味も甘さが強く、香りも食感も昔の西瓜のようでみずみずしくて、ジューシーだ。

サイズは普通の西瓜と一般的な小玉西瓜の真ん中くらいで、皮には「ひとりじめ」のシールが貼られていて、思い切りかぶりつきたくなる。スーパーマーケットで売られていた値段は約1300円前後で、味わいと大きさを考えると、とてもお得な気がする。もう店頭には並んでいないが、西瓜好きの人は来年の夏、ぜひご賞味くだされ。

赤じその香味も、夏らしい。今年の夏は熊野古道の休憩所で、赤じそのジュースを飲んだ。約2時間歩いたあとだったから、甘さがとても身体にやさしかった。グラスにつがれた天然の澄んだ美しい赤を眺める時間もなく、乾いた喉の奥に一気に流し込んでいた。この香味、遠い昔、駄菓子屋さんで飲んだジュースに似てるなあと、懐かしがっていた。夏の晴れた日京都や和歌山の田舎で見る赤じそ畑は、北海道のラベンダー畑よりもシブくて、罪な大人の女のように色っぽい。

香ばしいすき焼きの香りも、夏が似合う。京都先斗町や東京浅草など観光客が多い場所ほどすき焼きの文字を看板に書いた店が多く、ブラブラ散策する人の食欲をそそる。鰻の蒲焼きはヘビを食べているようであまり得意ではない僕にとって、すき焼きは香りに誘われる夏バテ防止食だ。鍋に和牛の牛脂を回し焼きしたときの香りは、たまらない。日本に生まれて良かったと思う瞬間でもある。あの香味で攻められると、ご飯がいくらでも食べられる。困った香りである。

アロマティックショップのお姉さんによれば、鼻から入ってくる香りは脳に直接刺激を与えるために、さまざまな場面ですぐに効能を発揮するらしい。夏の記憶が鮮明なのは、きっと映像が香り付きのせいだ。安西マリアも、夏木マリも、黛ジュンも、なぜか小学校のプールの微かなカルキの匂いとともに、僕の脳にメモリーされている。

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