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2013.09.30

イノイズム思想⑥「皮肉」

柴田常文 (コピーライター / クリエイティブディレクター)

皮と肉と書いて、「皮肉」。皮と肉だから、骨は入らない。身体の表面ってことだろうか。「皮肉を言う」とは、遠まわしに、相手の欠点や弱点を意地悪く非難すること、嫌味を言うことだ。「世の中、皮肉なもんだね」、という場合は、予想に反して思い通りにはいかないことを言う。「雨の予報だから運動会中止! と決定したのに、晴れちゃった!」というような場合に使う。長々と、国語辞書のようなことを述べてしまったが、朝、歩きながら「今の世の中、皮肉にも……のなんと多いことか」と思ったわけです。

原発から高濃度の汚染水が漏れ出している。ま、大したことはない! 急場こさえの貯蔵タンクに汚染水をドンドン入れておけ。そのうち除染装置も完成して、当面直ちに魚介類に深刻な影響を及ばさないであろうと考えられるレベルの放射線だけを海に流してしまえばいい……てな具合に、タカをくくっていたんではなかろうか。レベル1程度だって。皮肉にもそうじゃなかった。いきなりレベル3の深刻な事態だ。どうやって、増え続ける汚染水を処理していくのか? 東電に任せておくどころか、日本に任せておく事態でもない。太平洋が汚染されていく地球規模の問題だ。人類が総出で取り組む緊急事態なのだ。

「子どもには描写がキツすぎるから、閲読禁止にしてちょうだい!」と、おそらくPTAの勘違いオバサンどもが、学校に怒鳴り込んできたんだろう。慌てた学校並びに松江市教育委員会は「は、は、直ちに!」と、あまりよく考えずに禁止にしてしまった。それが「はだしのゲン」だよ。この漫画が何を訴えているのか、何で世界中で閲読されているのか? 世界唯一の被爆国が生んだ平和への強い希求の物語なのだよ。それを閲読禁止とは何事か?! この国の健全な世論はまだ残っていた! 禁止は撤回された。皮肉にも、閲読禁止のニュースが流れ世論が沸騰し始めたら、図書館からも、書店からも、「はだしのゲン」がなくなってしまったという。出版社は、増刷! という特需に、松江教育委員会様さま! となっているのだ。これが出版社の仕組んだ販促キャンペーンなら見事だ! と皮肉のひとつも言ってみたくなる。日本国憲法も閲読禁止、にしてみたらどうだろう。と、ふたつ目の皮肉も言ってみたくなる。(了)

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