【ウィークリーネタ】 毎週月曜日更新中!

2015.02.02

蒲田の街に魅せられて。

長友啓典(クリネタ編集長 / アートディレクター)

風間キヨノさんは81歳になられたそうである。蒲田の「キネマ通り」にある変哲もない、そこいらにある見方によってはシャッター商店街の明日をも知れない煎餅屋さんの主人である。お店には所狭しとお煎餅が列んでいる。驚いたことにその90%はキヨノおばぁちゃんが炭火で焼いておられるとのことだ。お米と炭に拘り60年が経った。

キヨノさんは10代の初めに、あるお煎餅屋さんに奉公に行き修行をつんだ。20歳にして蒲田の風間家にお嫁に来られた、とのことである。まさしくこの道一筋の超熟練の職人さんだ。キヨノばぁちゃんの焼くお煎餅の美味しさはこの拘りだ。不味い訳がない。実に美味しい味が出ている一等賞のお煎餅だ。お煎餅ってこんなに美味しいものだと改めて実感した。

これぞ日本が世界に誇る食べ物だ。世界遺産ものと言っても言い過ぎじゃない。毎日、毎日同じように家事をし、お煎餅を焼く、それこそ十年一日の如くの生活だ。このたまらなく美味しいお煎餅はこうして完成しているのだ。依ってここに風間キヨノさんに大田区民賞(そんなものがあるのか?)を授与したい(もちろんボクの勝手だが)。いや、そんなものじゃない、東京都民賞か、国民栄誉賞だろう。まてよ、この道一筋なんだから藍綬褒章が良いかも、まだまだ人間国宝という手もある。と、夢は大きく膨らんでくる。

お断りしておくがキヨノおばぁちゃまは、これっぽっちもそんなことを思っておられる訳ではない。あくまでも勝手なボクの妄想だ。それほどにこの手焼き煎餅に魅せられたということである。

このところ蒲田の街に嵌っている。日本工学院の顧問をしている関係で、月に一度はこの地に来ている。毎回新しい発見がある。お煎餅の風間商店がある「キネマ通り」と言われるように戦前は松竹映画の拠点として有名な街であった。NHKのドラマの「梅ちゃん先生」で全国区になったが、つかこうへいの「蒲田行進曲」でもその名は知れ渡った。「羽田空港」への拠点としても有名だ。

思いつくまま記してみると、ロケットに始まる色々な工業製品の備品をつくる町工場が多くある。先日、オリンピック仕様のボブスレーが作られたと新聞で知った。池上本門寺がある。黒湯で有名な温泉がある。食べもの屋さんでは、うなぎの「寿々喜(漢字:七が3つ)」、飯の「三州屋」、羽根つき餃子の「金春」、素揚げの「うえ山」等々が目白押しだ。昭和・東京の「ふるさと」がある。この街も様変わりするだろうがこの空気感を残す都市計画をなされて欲しい。風間商店の灯を消さないようにお願いしたい。

コメントする

*必須

*必須 Emailアドレスは公開されません